ハンドリングのスキル
リハビリテーションの場面でハンドリングは用いますか?
ハンドリングのスキルの重要な要素に「タッチの質」があります。
実はこの「タッチの質」が、患者さんの機能回復に大きな影響を与えます。
今回は「タッチが上手い人」と「タッチが下手な人」の違いを考えていきたいと思います。
結論:
✅ タッチが下手な人=手が滑る
✅ タッチが上手い人=滑らずに筋へ適切な力を伝えられる
本記事では、タッチの質を左右する「滑りのコントロール」について詳しく解説します。
タッチの滑りが生じるメカニズム
リハビリテーションの場面で、セラピストの手は患者の皮膚を通して筋にアプローチします。
しかし、手が滑ると適切に力を伝えられず、リハビリ効果が低下します。
タッチの滑りが生じる2つのポイント
🔹 滑り①:セラピストの手と患者の皮膚の間で滑る
🔹 滑り②:患者の皮膚と筋の間で滑る
📌 滑りの例え
この滑るという感覚は、「手袋をはめて、キツめの靴の踵を引っ張る」ような状態です。
滑って上手く力が入らなくて、なかなか靴が履けなくて、イライラするあの感じです
✅ 手袋と手の間で滑る
✅ 手袋と靴の間で滑る
→ 力が逃げてしまい、靴を上手く引っ張れない!
この二重滑り構造と同じように、セラピストの手が患者の皮膚の上で滑ると、適切に力を伝えられません。
タッチの質を高めるために重要なポイント
では、滑り①(セラピストの手と患者の皮膚の間の滑り)を減らすにはどうすれば良いのでしょうか?
以下の5つのポイントを意識することで、滑らない手を作ることができます。
① 大きくワイドな手を作る(ROMの確保)
- 指が硬くならず、広く動く手を作ることが大切
- 手の可動域が狭いと、接触面積が小さくなり滑りやすくなる
② 内在筋を活性化し、外在筋に頼らない
- 外在筋(指を曲げる筋)が優位になると、手が緊張し滑りやすくなる
- 内在筋(手のひらの筋)を使うことで、リラックスしたタッチが可能に
③ 三次元的に患者の身体構造にフィットする手の構え
- 平面的な接触ではなく、立体的なフィットが重要
- 例えば、手のひら全体を使って包み込むようにタッチする
④ 細やかな手の操作を可能にする姿勢コントロール
- 自分の姿勢が崩れていると、力が逃げてしまい滑りやすくなる
- 体幹の安定を意識し、適切なポジショニングを取ることが大切
⑤ 広い接触面積と均等な圧の持続
- 指先だけで触るのではなく、できる限り手のひら全体で接触
- 均等な圧を維持しながら摩擦を増やすことで、滑りを最小限に抑える
→ これらを意識することで、タッチの精度が向上し、適切に力を伝えられるようになります。
服の上からのハンドリングは効果が低い!?
タッチの質を考える上で、服の上からのハンドリングの影響も重要です。
📌 服の上からのハンドリングは「多重滑り構造」になる
- パンツ1枚の上からのタッチ → 三重滑り構造
- シャツと上着の上からのタッチ → 四重滑り構造(無理ゲー)
服が増えるほど、筋に適切な力を伝えにくくなります。
そのため、私は 「服の上からのハンドリングは効果80%減」 と考えています。
💡 服の上からではなく、可能な限り素肌へ直接タッチすることが重要!
タッチの質と痛みの関係
意外かもしれませんが、滑り①が少ない(摩擦が大きい)ほど、痛みが少なくなります。
逆に、滑り①が大きいと、無駄な摩擦が発生し、痛みを引き起こしやすくなります。
📌 痛みを減らすタッチのコツ
✅ 滑らない手を作る(摩擦を増やす)
✅ 均等な圧を持続的に加える
✅ 余計な力を抜き、リラックスしたタッチを意識する
痛みを軽減しながら、適切に力を伝えられるタッチを目指しましょう!
まとめ
本記事では、タッチの上手い・下手を分ける要因について解説しました。
✔ 重要ポイント
✅ 滑り①(セラピストの手と患者の皮膚の間の滑り)を減らすことが重要
✅ 服の上からのハンドリングはリハビリ効果を大幅に低下させる
✅ 摩擦を増やすことで痛みを軽減し、適切な力を伝えられる
タッチの技術は、練習と意識次第で必ず向上します!
今日から、ぜひ「滑らない手」を意識してみてください。